「古い人は自ら退くべきだ」。机上に埋もれていた資料に記された高杉良の言葉を、じっくりと読み返しました。

 秋の雰囲気が感じられ始めたこともあって、机周りの整理を始めました。
 この4カ月間、いろいろなことがありすぎて、机の上、机脇の書棚は本や書類、プリントアウトした資料、新聞の切り抜きなどがごちゃごちゃに積み重ねられ、どこに何があるか分からない有り様になっていました。
 整理しているときに、ふと目に留まったのが高杉良のインタビュー記事でした。
 出典は、今年5月4日に配信された「Yahooニュース オリジナル 特集」。
 高杉良は経済作家の第一人者と評価され、私も「金融腐蝕列島」など、ほとんどの作品をリアルタイムで読み漁ってきたファンの一人です。

 机上整理の手を休め、赤ペンでアンダーラインが引かれた部分を読み返してみました。

 強かった日本はどこへやら、もう東アジアの中でも霞んだ存在。これはやっぱり、政治が悪い。三権分立だなんて言っているけど、圧倒的に政治が強いもの。かつ、その、政治を仕切っているのは、過去にしがみついた高齢者ばかりでしょ。古い人は自ら退くべきですよ。そして、若い人、特に女性をもっと登用してもらいたい。(中略)。能力のある女性たちに、もっと自由に活躍してほしい。そうすれば、日本全体が底上げできるでしょう。

 ほんの一部分だけ引用させていただきました。このほかにも、自分の周りのことしか見えず、国家論も持たず、責任感もない政治家や"小役人"になってしまった役人を痛烈に批判する言葉が並んでいます。
 時代を象徴する巨大組織に鋭いメスを入れ、「誰にでも言いたいことを言ったし、書きたいことはすべて書いてきた」という高杉らしい言葉です。
 その高杉が「古い人は自ら退くべきですよ」と指摘しているのは、このインタビューの文脈上、「政治を仕切っている人」ということになるのですが、それは「政界」だけではなく、巷間、どこでも通じることのような気がします。
 もちろん、高杉が言っているのは「自分の周りのことしか見えず、国家論も持たず、責任感もない人」であって、「古い人」の中にもリスペクトすべき人は少なからずいらっしゃるでしょう。
 でも、そうではない人も数多く見受けられます。
 それと、「古い人」というのは、必ずしも「年を重ねた人」とは限りません。「年を重ねた人」の中にも思考に柔軟性と幅があり、とても魅力的な人物がいらっしゃいます。だから、「年を重ねている」というだけでその人を機械的に排除することは間違いですし、差別にもつながると思います。
 要は人物次第ですが、「年を重ねた人」は社会や組織の中での自分の立ち位置や役割をしっかりと考えることも大切だと思います。そうでないと、周り中から「老害」などと指摘されても、自分では理解することができないでしょう。
 そういう「裸の王様」みたいな人が組織のトップに居座り、周りの人たちの行動などを結果的に阻害するといった現実が、最近、あちこちで見られるようです。
 大した権力ではなくても、長年にわたってそれなりの権力を持ち、それを他人には譲ろうとしないので、勝手に人事や事業を進める「権力の集中」という弊害が生まれます。それに、批判の声を聞こうとしないので自部の行動が正しいと思い込み、だらだらと権力にしがみついているだけという「惰性」の弊害も生まれます。
 かくいう私は、どうなのでしょうか。「自分の周りのことしか見えず、きちんとした意見、持論も持たず、責任感もない輩」、あるいは「自己中心的で、保身、名誉欲だけが生きる基準となっていて、他の人の意見に耳を貸そうとしない輩」に成り下がってはいないでしょうか。そのようにみられてはいないでしょうか。
 そばにあるテレビが「激震! 永田町」の報道番組を流しています。
 「永田町」のことはともかく、プリントアウトした資料を読み直しながら、高杉のこれらの言葉を、じっくりとかみしめました。